これから結婚するみなさんにとって、「結婚はお金がかかる」という印象が強くて、結婚したいけどお金がないなぁと、漠然とした不安を抱いているかたも多いと思います。
そんな方にとって、少し気持ちが楽になる、行政による結婚支援補助金があるのをご存知ですか?
全ての方が対象というわけではありませんが、結婚支援事業を行なっている市町村にお住いの方で一定の条件を満たしている方は補助金を受けることができます。
結婚支援事業を行なっているのは大阪府内でも一部の市町村ですが、その中で枚方市は結婚支援事業を行なっている!ということで、支援事業についての条件や金額などについて、市役所の職員さんに詳しくお話を聞かせていただきましたので、ご紹介していきます。
- 枚方市結婚等新生活支援事業とは?
- 結婚支援事業「所得制限400万円」の意味
- 結婚支援事業の年齢制限と補助金額
- コロナの影響はありましたか?
- 枚方市パートナーシップ宣誓制度のご利用世帯も対象
- 枚方市結婚等新生活支援事業制度の課題
今回インタビューさせていただいた枚方市役所の職員の皆さん
本記事は、枚方市役所の子ども青少年政策課の江藤さん、梶原さん、松尾さんにご協力いただきました。
職員さん
枚方市役所の子ども青少年政策課では、枚方市の子どもや子育て・青少年育成に関する業務を行なっています。
取材のきっかけ
川上さん:私は大阪府枚方市で自分で結婚相談所の仲人をしておりまして、このコロナの中で、婚活ができなくなってる人が多くなってきたのを肌で感じています。それに伴い婚姻率が下がっているというデータも出てきているとかで……。
実際私もこの「枚方市結婚等新生活支援事業」の補助金制度があることは知ってはいました。ですが、実際これを活用して結婚した人に出会ったことはなかったんです。
たまたま先月「報道ランナー」というテレビ番組で菅内閣に代わった時に「国の施策で結婚支援の補助金が60万円になることについてどう思いますか?」というテーマの取材を仲人として受けて、その時に改めてこの施策や補助金について深く知るきっかけになったんです。
実際こういう施策を行なっているのは全国や大阪府内の市町村で見ても限られているということだったので、そのあたりも詳しく聞けたらなぁと思っています。よろしくお願いします!
職員さん:よろしくお願いします!
枚方市結婚等新生活支援事業とは?
川上さん:ではまず、この「枚方市結婚等新生活支援事業」についてざっくりご説明いただいてもよろしいでしょうか?
職員さん:はい。枚方市では、結婚に伴って新たに生活を始める新婚のご夫婦を応援するため、住宅や建物の取得・賃借の費用、引越しの費用の補助を行っています。補助上限額は1新婚夫婦あたり、30万円を上限としています。
具体的な経費となる項目や必要書類、申請方法については、枚方市役所の公式サイトをご覧いただけたらと思いますが、下のようにいくつか条件がございます。
(1)令和2年4月1日~令和3年3月31日に婚姻届を提出し、受理されている。
(2)婚姻日における年齢が夫婦ともに40歳未満(39歳以下)である。
*年齢は誕生日の前日に加算されます。(年齢計算に関する法律第2項及び民法第143条)
(3)令和元年(平成31年)の夫婦の所得(年収とは異なります。詳しくは本ホームページ下部の「参考・所得について」をご覧ください)の合算が400万円未満である。
*補助金の申込みの際に無職である場合は、所得を0円として算出します。
*貸与型奨学金の返済を行っている場合は、令和元年(平成31年)の所得から返済の年額を控除します。
*生活保護を受給されている場合は本補助金を交付できません。(収入認定対象)
(4)夫婦の住民票の住所が、結婚に伴い新たに生活を送るための枚方市内の住宅の住所となっている。
(5)夫婦のいずれもが枚方市の市税を滞納していない。
(6)枚方市に継続して居住する意思がある。
(7)夫婦のいずれもが暴力団員又は暴力団密接関係者でない。
(8)夫婦のいずれもが過去に本補助金又は国の結婚新生活支援事業費補助金等を活用した他の地方公共団体の補助金の交付を受けていない。
(9)同一の住宅について、「枚方市三世代家族・定住促進補助金」の交付の決定を受けていない。
※枚方市パートナーシップ宣誓制度のご利用世帯も対象となります。
(枚方市役所Webサイトより引用)
川上さん:ありがとうございます。結構条件が多いですね!この枚方市結婚等新生活支援事業制度を作られたきっかけはなんだったのでしょうか?
職員さん:この結婚等新生活支援事業は枚方市では平成29年度から始まりました。
経済的な理由で結婚への一歩が踏み出しにくい若者世代への支援として、もともと国が少子化対策の一環で始めた事業で、それに対して参加を希望する市町村が手を挙げて加わる、というものでした。
枚方市としても、合計特殊出生率が全国や大阪府の平均と比べて低いということや、人口減少が課題としてあるなかで、この事業に取り組むことで少子化対策・定住促進・結婚促進につながるのでは、という目的で参加しました。
川上さん:なるほど。そういうことだったんですね!大阪府内でもこの制度があるのは限られた市町村だけで、令和2年で取り組んでいるのは大阪府内で枚方市・泉佐野市・和泉市・藤井寺市・岬町・太子町のみですよね。
職員さん:そうですね。
川上さん:実際この制度を利用されてる方ってどれくらいいるのですか?
職員さん:実績としては、昨年度(2019年度)は145件のお申込みをいただきました。
川上さん:けっこう多いんですね!その中で枚方市民同士のカップルもいてますか?それとも他府県・他の市町村から来られた方が多いのでしょうか?
職員さん:ご夫婦ともに元々枚方市民で婚姻された方もいらっしゃいますし、ご夫婦とも市外から転入してくださった方もいらっしゃいます。
川上さん:この施策を知っていることで枚方に来たという人もいますか?
職員さん:引越し先を選ぶときに他市と比べて、この制度があるから枚方を選んでいただいた、というお声もいただいていますね。
川上さん:個人的に145件っていうのが意外と多いな!と思ったんですけど、市役所職員の皆さんの感覚ではどうなんでしょうか?
職員さん:そうですね、多い方かと思います。
川上さん:本当はもっと利用してほしいというのもありますか?
職員さん:数だけ聞くと多く感じますが、枚方市全体の婚姻数の割合から言えば、まだ全ての方に知れ渡っている制度ではないというところは感じます。ただ、平成29年度からスタートした時は100件程度だったので少しずつ認知が広がってきたのか、お申込件数は増えて来ています。
この制度をより多くの皆さんに知っていただける機会を増やそうと、枚方市の広報紙への掲載だけでなく、不動産会社などにチラシを置いていただいたりしていますが、どこまで行き届いているかは…本市としても周知方法は今後の課題ですね。
結婚支援事業「所得制限400万円」の意味
川上さん:私が仲人目線でいうと、実際結婚相談所を登録するには所得制限がありまして、男性で年収300万円以上がベースというところで、実態は年収200万円くらいだとなかなかお申込みが来なかったりするんです。
そうなってくると、この制度を使用する時の条件の一つの、夫婦で「所得制限400万円」は軽くオーバーしてしまうかなと感じました。
この所得制限400万円というのは何か基準があるのでしょうか?
職員さん:今年度に関しては、枚方市独自で所得制限の上限を400万円にしています。国の制度では現在年齢34歳以下、夫婦合算で340万円未満という形になっています。そもそもその所得が低めの制限があるのは、経済的な理由で結婚に躊躇している若い方達により結婚してもらいやすいように、というような結婚支援の側面があります。枚方市では国の基準より少し上乗せして、お申込みいただける対象を増やしています。
職員さん:ただ、お申込み段階で、例えばご夫婦のどちらかが他府県から枚方に来られて仕事を辞めている場合、その時点での所得は0円としますので、ご主人だけや、奥さんだけの所得であればありえなくない金額かと思います。パターンは色々ありますが、お申し込み時点でお仕事をされてらっしゃるかどうかが判断基準になります。
川上さん:前年の収入になるのでしょうか?
職員さん::令和2年の制度では前年の所得、つまり令和元年の所得の合計金額を確認するんですけど、あくまでお申込み時点で働いていらっしゃる方の所得をお調べいただくので、退職されている場合は所得は0円になります。
川上さん:なるほど!申込時点で働いている人の所得が基準になるということなんですね。ということは、結構使ってもらえる人多いですよね。男性で例えば35歳くらいの人だったら平均年収350万円くらいですよね。ということは、男性だったら、「枚方に身一つで嫁においで!」って言えるという。
職員さん:そうですね。
川上さん:うちの相談所ではオンラインのネットワークを使うので、滋賀の人や京都、奈良など大阪府外から枚方に嫁いで結婚される機会も割と多いんですよ。夫婦どちらかが他府県でどちらかが枚方だった場合、じゃあどっちで住む?ってなるわけですよね。
余談ですが、例えば、枚方にするのかそれとも滋賀にするのかって話になったときに、だいたい決めるほうはめっちゃ好きな方が相手の住んでいるまちに行くことが多いんですよ(笑)女性の方が男性のことをめっちゃ好きだったら男性のまちに行く。男性の方が女性の方をめっちゃ好きだったら女性のまちに来ることが私の経験上は多いんです!
でももしどっちかのまちに結婚支援事業制度があったとしたら、これはまち選びのひとつのきっかけとしてはいいのかなぁって思いました。
職員さん:なるほど、そういうことがあるんですね!きっかけのひとつになって、枚方を選んでいただけると嬉しいです!
結婚支援事業の年齢制限と補助金額
川上さん:続けて質問なのですが、年齢制限が39歳ということで、39歳というとけっこう所得が上がってくるんじゃないかと思うので、どちらかというと若い人をターゲットにしているのかなというイメージで捉えました。実際そうですか?
職員さん:元々は枚方市も34歳までというところから始まりましたが、晩婚化も進んでいるため現在は39歳まで引き上げたというところです。
川上さん:そうですよね、今や男女ともに成婚平均年齢が35歳以上、男性は特に40歳くらいで結婚することがほとんどですよね。
今度の国の制度でいうと補助金が60万円に上がることについてはどう思われましたか?いま現状、この制度をやっている市町村から金額をアップしていくと国会でも言われていたので、枚方市も対象で上限は60万円ですよね?
職員さん:それについては、国の条件に各市町村が合わせてやらないといけないということはないんです。各市町村で予算等を鑑みて決めていく事になります。
川上さん:そうなんですね!でももし60万円の補助ってなったとしたら結構インパクトあるので、申込みも増えそうですよね。
先日私がテレビ取材を受けたときに、別で枚方市駅周辺で街頭インタビューをしてたんですよ。そのときの回答で「そんなにお金がもらえるのであれば結婚支援補助金を出している市に引っ越したくなる」というコメントがけっこうありました。
今ってリモートやオンラインで仕事ができるようになったので、都心で便利と言うよりも住みやすい場所を探されている人も多くて、うちの結婚相談所の会員でも今まで大阪市内に住んでたけど、結婚を機に違うところに住もうかなって言ってる人もいるんですね。そういう人たちのちょっとしたきっかけになったらいいですよね。支援してもらえるなら枚方にしようかな!みたいな感じで。
職員さん:確かにそうですね。そういえばこの結婚新生活支援事業の話がニュースで出てから全体的に問い合わせは増えましたね。
川上さん:なるほど。やっぱりテレビの影響力って強いですよね。
うちで成婚したみなさんも結婚新生活支援事業使えるんかなぁとかけっこう言ってましたね。枚方住むんやったら、って言ってたので枚方に引っ越して来てくれるいいきっかけになると思いましたね。
コロナの影響はありましたか?
川上さん:コロナの前後ではお申し込み数の状況に変化はありましたか?
職員さん:実は申込み数自体はそんなに変わってないんです。
川上さん:そうなんですね〜!意外でした。
職員さん:確かにちょっと心配ではあったんですけど、窓口に来てくださっていましたね。コロナの感染拡大前と比べて、とくに申込件数や相談件数が減ったようには感じていません。
枚方市パートナーシップ宣誓制度のご利用世帯も対象
職員さん:おそらく枚方市がやっていて他の市町村があまりやっていないことと言えば、パートナーシップ宣誓制度でも結婚等新生活支援事業を受けられるということでしょうか。
川上さん:パートナーシップ宣誓制度とは?
職員さん:男女のカップルだと婚姻届を出しますが、枚方市の場合はそれだけではなくて、男性同士、女性同士などの性的マイノリティのカップルのパートナーシップ宣誓制度にも取り組んでいます。その宣誓証を婚姻届と同じく扱うということでこの枚方市結婚等新生活支援事業制度も受けることができるのです。
川上さん:そうなんですね!
職員さん:枚方市が独自で性的マイノリティのカップルの方々も認めて補助金を出していこうということにしています。
だから、パートナーとして一歩踏み出せるきっかけになればと考えています。おそらく、パートナーシップ宣誓をしている性的マイノリティカップルの方を対象にしている市町村はほとんどないのではと思います。
川上さん:すごいですね。性的マイノリティ支援は東京や渋谷なんかで力を入れているような印象だったのですが、枚方市もけっこう力を入れているのですか?
職員さん:そうですね、枚方市は平成31年度に始まりました。性的マイノリティの方を積極的に支援していくことを宣言し、パートナーシップ宣誓制度などを開始しました。それに伴い、結婚等新生活支援事業でも性的マイノリティのカップルの方も対象にさせていただくことになったんです。
枚方市結婚等新生活支援事業制度の課題
川上さん:この枚方市結婚等新生活支援事業制度に対する今後の課題はありますか?
職員さん:
上にもあげたように条件がたくさんあるというところで、お電話でお問い合わせいただいても、なかなか伝えきれない部分があることですね。なのでどうしても一度は窓口に来ていただいて直接お話させていただくというのが必要になってくるんです。忙しくて窓口に来られない方は、何度も電話や郵送でやり取りすることになってしまいます。
この制度がより申し込みやすくなるよう、お電話でのお問合せ時の説明のやり方も日々、試行錯誤しています。
川上さん:なるほど。実際申し込みに来られて、やっぱり条件に合わなかったという方もいらっしゃいましたか?
職員さん:そうですね、条件は必ず窓口で確認させていただくのですが、所得のところで引っかかる方がたくさんいらっしゃいます。
川上さん:やっぱりそうなんですね〜。
職員さん:所得証明の書類を持って来ていただいたら、これでは厳しいですねということもあるのですが、クリアされている方の方が多いです。
川上さん:皆さん自分で調べてちゃんとチェックして来られるんでしょうね。でもダメだった方はやっぱり残念そうですか?
職員さん:あぁ〜、そうですか〜って少し残念そうになられますね。
川上さん:そうですよね(笑)引越費用にも充てられるのだとありがたいですよね。本当は自分たちで引っ越しのダンボール箱に詰めないといけないところを、ラクラクパックにできるかもしれないですもんね(笑)
職員さん:お引越し業者さんに頼まずにご自分たちでお引越しされる方も多いみたいなんですが、この制度で引越し費用が出ると知れば使われるかもしれないですね。
川上さん:そのほか、こんな人にこの枚方市結婚等新生活支援事業の制度を知ってほしい!などはありますか?
職員さん:やはり制度本来の趣旨だと、結婚したいけれど経済的な面で一歩が踏み出しにくい方にこそ使っていただくべき制度だと思います。
市役所のホームページや広報ひらかたにも記事を出してはいますが、そういう方に対して私たちもアプローチする方法がなかなか難しいと感じています。
川上さん:きっと、出会う前から知っておけたらよりよいでしょうね〜
男性からすると30万円もらえるっていうのがわかっていると少し、安心ですよね。結婚って指輪買ったり何かとものいりですし、結婚式も込みでってなってくるとなんだかんだで平均的にも300万円くらいは動くんですよね。さらに若い夫婦だったらちょっとでもお金あったら子どもにお金をかけることもできますし、たかが30万ですが300万の1割って、大きいですよね。
川上さん:アプローチの方法ですが、婚活パーティーで配ったらよさそうですね!男女がマッチングしたときにこの制度のチラシをカップル成立!おめでとうございます!って言って渡すという(笑)
職員さん:確かに、そうなるとすごい後押しになりますね。効果的かも知れないです。
川上さん:あと、学生さんにちも教えておいてあげると良いかも知れない。外大生なんかは結婚するのが早い人もいますし、お金もなかったりするでしょうし、地方から来てる人も多いですもんね。外大に来て、枚方が気に入って結婚して、定住してくれたら、良いかも知れないですね。
職員さん:そうですね〜、引続き枚方に住んでもらえたら私たちも嬉しいです!
川上さん:最後に、先ほどこの枚方市結婚等新生活支援事業は平成29年からスタートとおっしゃっていましたが、今後も継続されて行く予定ですか?まだわからないとは思いますが…。
職員さん:まだ決まっていないので必ずとは言えないですが、継続していきたいとは思ってます!!
川上さん:はい、ありがとうございます!
今日は貴重なお時間をいただき、ありがとうございました。
今回はずっと気になっていた「枚方市結婚等新生活支援事業」について詳しく知る事ができました!
条件や制限もありますが、活用できたら少しでも結婚支援にゆとりが出ると思いますので、使える市町村にお住まいの方はぜひ一度市役所のページを確認してみてはいかがでしょうか。